2023.3.28の学び(寄託)

■寄託契約

 

1)要件

民法第657条

寄託は、当事者の一方があるものを保管することを相手方に委託し、相手がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

 

2)特徴

①諾成契約。

民法改正で、もの引き渡さなくても成立することになった。

片務契約

・受寄者の無償行為。贈与や使用貸借と違い無償行為を行う者が受動側で主導権は寄託者にある。つまり、寄託は寄託者のための規定であり、寄託者はいつでも寄託を解除できるなど寄託者の義務性が弱く、受寄者の義務性が強い。

③無償行為。

・②のとおり。

・無償寄託と有償寄託とで受寄者の負う義務に違いがある。

無償寄託:自己の財産を管理するのと同等の義務。軽減されている。

有償寄託:他人の財産を管理するのと同等の義務(善良管理義務)

④返還は寄託場所で行う。つまり受寄者は持参しなくてもいい。

⑤通常、支払い期限などの期限の利益は、債務者のためのものでああるが、寄託の場合は期限の利益が債権者にあるのが特徴。期限の利益は放棄できるため、債権者はいつでも返還請求などの期限の利益の放棄を行うことができる。

 

3)類型

3.1)混合寄託

①要件

民法第665条の2

1 複数の者が寄託した物の種類および品質が同一である場合には、受寄者は各寄託者の承諾を得たときに限り、これらを混合して保管することができる。

 

②特徴

・寄託の特徴に加えて、寄託は寄託物そのものを返すのが原則だが、混合寄託は同一のものであれば返還するのはそのものでなくてもよいという特徴がある。

・混合寄託は、保管場所や管理する負担の低減および費用の節約ができるため倉庫を使った寄託などで利用される。

・消費寄託と異なり、受寄者は寄託物の消費はできない。

 

③できること・できないこと

・寄託に加えて、寄託物が滅失した場合にできること

(寄託者):混合して寄託している総寄託物に対するその寄託している物の割合に応じた数量について、返還を請求できる。また損害賠償請求もできる。

 

3.2)消費寄託

①要件

民法第666条

1 受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には、受寄者は、寄託された物と種類、品質および数量の同じ物でもって返還しなければならない。

 

②特徴

・寄託に加えて、寄託物を消費することができる点で他の寄託と異なる。

・受寄物を消費できるという点で消費貸借と類似しているが、消費貸借は利益が受寄者にあるのに対して、消費寄託は利益が保管するリスクを回避できる寄託者にあるという点で異なる。

・そのため消費寄託の規定を準用しつつ、消費寄託と異なる点については寄託の規定を準用している。

・預貯金の消費寄託に関してのみ、受寄者が資金運用することを前提としているので、寄託者だけでなく受寄者にも利益があることから、受寄者は寄託物をいつでも返還できる仕組みになっている。他の寄託だとやむを得ない事情がなければ受寄者は返還することができない。

 

③できること・できないこと

・返還された物に契約不適合や返還不能の場合

(寄託者):価額による償還請求ができる。

 

 

4)できること・できないこと

4.1)ものを引き渡す前であれば解除できるか

 

4.1.1)無償寄託かつ書面によらない場合

(寄託者):解除できる。寄託は寄託者のための規定なので寄託者の義務性が弱いため

寄託者はいつでも解除できる。

(受寄者):解除できる。贈与や使用貸借と同じ後の紛争を避けるという理屈。

     寄託者の解除により発生した損害があれば損害賠償を請求できる。

2023.3.1_学んだこと(贈与、消費貸借)

 

4.1.2)無償寄託かつ書面による場合

(寄託者):解除できる。4.1.1)①に同じ。

(受寄者):原則解除できない。なぜかというと書面は契約の拘束力が強く、寄託は受寄者の義務性が強いため。ただし以下の要件を満たす場合は解除できる。

・解除要件:寄託者がものを引き渡さず、相当の期間を定めて引渡しを督促したが、なお引き渡さなかった場合は解除できる。引き渡すまで法律で拘束するのは受寄者に対して酷なため。

 

4.1.3)有償寄託の場合

(寄託者):解除できる。4.1.1)①に同じ

(受寄者):解除できない。寄託は受寄者の義務性が強いため。ただし上記解除要件を満たせば解除できる。損害の賠償請求もできる。

 

4.2)ものを引き渡した後に解除できるか

 

4.2.1)保管期間の定めがある場合

(寄託者):解除できる。4.1.1)に同じ。

(受寄者):原則解除できない。期限の利益は寄託者にあり、受寄者はそれを尊重しなければならないため。

 

4.2.2)保管期間の定めがない場合

(寄託者):解除できる。4.2.1)①に同じ。また保管する必要がなくなった後も義務で拘束するのは無意味なため。

(受寄者):解除できる。寄託は受寄者の無償行為であるためいつでも解除できる。