2023.03.11の学び(使用貸借)
◆使用貸借契約
1)要件
民法593条
使用貸借は、当事者の一方があるものを引き渡すことを約し、相手がその受け取ったものについて無償で使用及び収益して契約が終了したときに返還することを約すことによって、その効果を生ずる。
2)特徴
①諾成契約:お互いの意思表示が合致すれば成立する。
②無償契約:賃貸借と異なり借主から貸主への対価は不要。これは貸主の無償行為。
・無償行為のため貸主は配慮される。例えば引渡し前であればいつでも解除可能や費用など。
③双務契約:貸主には引渡す義務が生じ、借主には目的達成後の返却義務が生じる。
④貸主の無償行為なので、相手に義理があるからとか、相手が親友だから家族だからただで貸すというような貸主と借主との間に特別な人間関係がある場合に発生する可能性が高いと思われる。だから借主が死亡すると相続対象にはならず終了する。
⑤一方で貸主が死亡しても終了せず相続される。
⑥原状回復義務:借主には現状回復義務がある。
⑦貸主の引渡し義務は、借用物を特定したときの状態で引き渡せばよい。贈与と同じ。
・貸主の無償行為なので貸主の負担を軽減する配慮がされている。
3)類型
・特になし
4)パターン
4.1)やめたい場合
Q1:貸主は解除できるか
①書面でなく引渡し前なら解除できる。
・貸主の無償行為であることを考慮して法的拘束力が緩和されている。贈与と同じ。
②借主が承諾なく第三者に貸し出したり、借用物の性質によって定まった用法に従わずに借用物を使用及び収益したときは、無催告解除できる。
・借主だからただで貸してるのに、その信頼関係を破壊したのだから即解除できるのが普通。
・使用及び収益できる範囲は契約によって定める
Q2:借主は解除できるか
①いつでも解除して返却できる。
・ただで借りているのだし、使用収益に使用するというのも目的・使い方であって義務ではないのだからいつでも返却できる。
4.2)返還時期を定めた場合にできること
Q1:貸主は返還時期前に返還を請求することができるか
①寄託と異なり使用貸借はできない
Q2:借主は返還時期前に返還できるか
①利息がないからいつでも返還できる
4.3)返還時期を定めなかった場合の終了事由
Q1:貸主は終了させて返還を請求できるか
①借用物の使用及び収益の目的がある場合は、目的に従って使用及び収益を終えると終了するので、それまでは返還請求できない。
②または、目的に従い借主が使用及び収益できる期間を経過した場合は、解除できる。
例えば、田んぼを貸したけど台風によって稲が倒されて収穫できなくても、収穫期間が経過すれば貸主は解除して返還を請求できる。
③借用物の使用及び収益の目的を定めていない場合は、いつでも解除して返還請求できる。
Q2:借主は終了させて返還できるか
①返還時期の定めによらずいつでも解除して返還できる。
4.4)費用が発生したとき
Q1:借用物の使用時に発生する通常の必要費はどちらが負担するか
①借主が負担する。
・貸主は貸す義務があるが消極的な義務であり、積極的に使用できる環境を用意するまでの義務は負わないため、借主が負担する。
Q2:通常でない必要費および有益費はどちらが負担するか
①通常でない必要費は貸主が負担する。
②有益費はそれが現存する分に限り貸主が負担する。(583条2項)
Q3:損害賠償請求と償還請求に期限はあるか
①返還したときから1年間。
②返還したときから1年間は、損害賠償請求権のほうの時効は完成しない。
・長期間借りていると、損傷してから10年経過で成立する消滅時効が完成してしまい、返還されてから貸主が損害賠償請求できないという状況を避けるため。
4.5)借用物を返還するとき
Q1:部品を附属させている場合
①現状回復義務を負う。つまり原則、取り外して借りたときの状態にてから返還しないといけない
②取り外しに相当な費用が掛かる場合はそのまま返還できる
③取り外せない状態ならそのまま返還できる
Q2:借りてから損傷させた場合
①借主に責がある場合は借主が原状回復義務を負う。
・貸主の無償行為なので、賃貸借と異なり、経年劣化や通常損耗を免責する規定はない。なぜ規定がないかというと、無償なんだから経年劣化や通常損耗は借主が回復するのが当然という考えもあれば、逆に貸主がそれを甘受するという考えのときもあるから。そのため貸主の思いによって決まる。
②借主に責がない場合はそのまま返還できる。